雑記帳

関西在住の中年男性による日々の雑記です。

職業としての官僚

 

 

嶋田博子著。官僚の制度や個々人のあり方、そして求められる役割は時代と共に変わる。特に第1章の昭和後期(1986年)と現在(2022年)でどう変わったのか、様々な観点からの比較考察は大変興味深かった。筆者は、官僚制度がその理念を達成するためにどうあるべきか、各国比較や政治思想も交えて模索するが、明確な答えが出るはずもない。著者は長年人事院で働いてきた方なので、これまでずっと考えてきた思考過程を本書で整理したのだろう。ここでワンフレーズの安易な処方箋を出されたり、個々の官僚の「意識」に焦点を当てる論よりも、結局は主権者である国民(政治)が国のあり方をどうするか、自分事として考えないといけない、という基本に立ち戻っているのは、むしろ誠実だと感じた。

 

どのような組織であれ、(外から見ているとなかなか意識できないことだが、)中で働いている人は、当然誰もが普通の人間である。主権者である国民こそ、そういう視点をもって考えることが大事だという著者の指摘は正しい。

 

本書はコンパクトにまとまった読みやすい本で、ちゃんと読んで理解すれば著者の主張はもっともだと思うだろうが、一方で、本当に読んでほしい人は読まない(または読んでも「官僚が自分達の言い訳をしているだけ」などと感じて理解しようとしない)ので、残念ながら「届かない人には届かない」気もする。