萩原慎一郎著。私が本書を知ったのは、NHKのニュース番組。本書が著者にとっての初の歌集であり、また遺稿となったことを取り上げていた。番組を観て、すぐに読みたいとはならなかったが、どこか心に残っていて、いつか読まないといけない書だ、という感じに変わっていき、そして手に取った。
真夜中に冷たい水を飲み干せりさっきまでは明日今ならば今日
癒えることなきその傷が癒えるまで癒えるその日を信じて生きよ
今日という日を懸命に生きてゆく蟻であっても僕であっても
なにかしら理由があって流れ出すなみだを拭うためのハンカチ
著者が誰かに何かを伝えたかったのだとしたら、それはきっと成功していると思う。彼の三十一文字が、私の心に次々に刺さっていったから。残念なのは、そのことを著者に伝えられないことだ。そのことが、本当に残念だ。読んだよ、素敵な歌をありがとう、と伝えたかった。