高野秀行著。これまで読んだ氏の著書から、著者のことを明確な目的を掲げてそれに向かってどんな壁でも乗り越える超人かと思っていたのだが、氏も私と同じく悩み、迷い、回り道をしてきたことが本書で分かった。ただ、氏は自分の望むものと苦手なことをよく自覚していた(高野氏は地道さをどうしても受け入れることができなかった)。そして自身の類稀な好奇心と探究心を武器として、懸命に目の前の課題に向かっていた。
本書は、いつものような探検談ではなく、外国語習得の苦労談であり、超実践的な手法を語る書である。そして著者の青春時代を振り返った書でもあった。本書を読んだ後、また著者の「アヘン王国滞在記」を再読したくなった。なお、本書で得た語学習得のコツは以下のとおり。
- 明確な目的を持つこと。明確な目的があれば語学習得のモチベーションにつながる(著者はそれを「飢えは極度の主体性を生む」と言っていた)。
- ネイティブが話す例文(構文の文字+音声データ)を反復学習することが語学の近道。そして現地へ行って実際に使って修正しながら覚えること。
- 言語は「情報伝達」と「相手と親しくなること」のふたつの機能を持つ。IT技術が発達して翻訳レベルが上がっても、後者の機能がある限り語学習得には意味がある。