雑記帳

関西在住の中年男性による日々の雑記です。

アメリカン・コミュニティ

アメリカン・コミュニティ―国家と個人が交差する場所

アメリカン・コミュニティ―国家と個人が交差する場所

 アメリカを舞台にしたフィールドワークの成果。アメリカらしさを見つけようとして取り組んだ著者が得た結論は、多様性こそがアメリカの核であり、「アメリカらしさ」なるものを容易に定義付けしようとすることは実に難しい、ということであった*1


 コミュニティへの志向に関する9つの物語は、ソーシャル・キャピタルの意味を考えさせるに十分なものだった。社会にとってそれ自体が目的でもあり、同時に活用すべき財産ともいえるソーシャル・キャピタル。日本のように世間の力学で動くシステムの中でそれが衰えていく様は、どれほど深刻な意味を持つのだろうか。


 それはさておき、この本は非常に読みやすかった。その理由としては、取り上げられていた事例自体が面白いということもあるのだろうが、著者の渡辺氏の文章の上手さにも拠るところは大きいと思う。簡潔にして無駄が無く、文脈からは深い思慮が感じられるが表面上は淡々としている。素晴らしい。

*1:もちろん資本主義、個人主義地域主権(連邦制)そしてセキュリティというキーワードは出てくるが。