雑記帳

関西在住の中年男性による日々の雑記です。

不可触民、深夜特急1,2

不可触民―もうひとつのインド (知恵の森文庫)

不可触民―もうひとつのインド (知恵の森文庫)

 インドのカースト差別の根深さを書いた、もう20年以上も前に出された著作。差別というものは、行き着くところ被差別者を物と見なすことだということが良く分かる。


 これまでの人間の歴史において、差別は人種的にも文化的にも社会システム的にも存在してきたし、今も根強く残っている。それは勿論日本も例外では無い。「内政干渉と言われようが、差別は許されるべきではない」とインドを強く批判することも可能だろうが、・・・。どこの国も、人様の差別を批判できる身ではないし、他者が批判して簡単に変わるような代物であるわけもなく。経済の発展に伴い、格差は残りつつも全体的な生活レベルが上がることが、宗教的(文化的)な差別構造を変えることに繋がると良いのだが。


 不可触民を「ハリジャン(神の子)」と呼び、彼らの地位を引き上げたはずのガンディーが批判的に描かれるくだりは新鮮だった。曰く、カースト制度が残る限り、カーストの枠外に位置づけられた者が救われることは無い、とのこと。彼のしたこと自体は必ずしも間違っているわけではないが、根底の部分で方向性を誤っているのだという見方は、ガンディーの偉人伝を読んだくらいしか知識の無い私には驚きであった。



深夜特急〈1〉香港・マカオ (新潮文庫)

深夜特急〈1〉香港・マカオ (新潮文庫)

深夜特急〈2〉マレー半島・シンガポール (新潮文庫)

深夜特急〈2〉マレー半島・シンガポール (新潮文庫)

 インド・ネパール編から読み始めたのだが、非常に面白かったので改めて通して読むことにした。沢木耕太郎の紀行文は何故こんなに面白いのだろう。もちろん旅の内容そのものが面白いということもあるのだろうが。自分の体験に基づいて旅を描いているにもかかわらず、どこか自分を突き放して記載することが出来ているからだろう。多くの読者がこれを読んで旅に出る気持ちも分かる。


 今は香港もマカオもすっかり変わってしまったのだろうか。マカオでの大小博打の話がとても気に入ったので、一度行ってみたくなったのだが、国が変わり、10年も経てば人も風景も変わってしまうのだろうな。