雑記帳

関西在住の中年男性による日々の雑記です。

ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー

 

 

ブレイディみかこ著。多様性あふれるイギリス南部の都市ブライトンで暮らす著者の家族。著者の子どもの周辺で起きる様々な出来事を母目線で語る。著者の子どもとの距離の取り方、向き合い方がとても印象に残った。

 

著者の周辺では人種、民族、宗教、経済格差が入り交じり、それを前提として人付き合いをしないといけない。「多様性を大切にしよう」という呼びかけがされるくらいに多様性の乏しい日本とは異なり、そこで実際に暮らす人々にとっては容易なことではないのだろう。多様性というよりは、深刻な分断社会というべきか。そうであっても、そこで暮らす人々にとってはそれが現実なので、問題の解消はできないとしても、上手にそれと付き合っていかないといけない。

 

本書で特に印象に残ったのは「シンパシー(sympathy)」と「エンパシー(empathy)」の話。シンパシーは聞いたことがあるが果たしてエンパシーとは?と思ったが、著者の子の説明によると、「自分で誰かの靴を履いてみること」だそうだ。とても良い説明だと感じた。本書でも英英辞典を用いて詳しく説明されているが、自分でも実際に調べてみると

the ability to understand another person’s feelings, experience, etc.(www.oxfordlearnersdictionaries.com)

とある。大切なのは「ability」、つまり能力であったり技術なのだろう。シンパシー(sympathy)にはどことなく「自然と」「心から湧き上がってくる」というイメージがある。自分と異なる何かを理解するのに必要なのは、「人間であれば当然に持っている(ことと期待される)共感力」ではなく、その分断や壁を乗り越えて、理解しようとする意識や能力であり、それは自然発生するものではなく、手に入れようと努力しないと入手できないものなのだろう。といっても、難しいことではない。著者の子どもが言うように、「自分で誰かの靴を履いて」みればよいのだから。