雑記帳

関西在住の中年男性による日々の雑記です。

ハイパーハードボイルドグルメリポート

 

 

上出 遼平著。世界各地を訪ね、そこで暮らす人たちの「ごはん」を見せてもらうというドキュメンタリー番組を題材とした取材記。しかし本書に描かれているのは、現地の人々の暮らしだけでなく、著者の価値観、そして世界観であった。番組はドキュメンタリーなので客観的映像で構成されているのに、本書では著者の「自分」が全面に描かれるとは、面白い。面白いが、あまりの熱量のため読むのに疲れるのもまた事実。私は本書を読むのにとても時間がかかった(それでも読む価値のある本、ではある)。

 

 

世界は広い。日本で生活をしていては見えない、聞こえてこない暮らしがある。本書で描かれるのは、大半が苦しい生活である。私にとっては、交わることの無い「別世界」である。しかし、著者は現地に行き、現場に入り、一緒にごはんを食べる。国や地域社会を描くのではなく、そこで暮らす「人」を描く。「人」というのは、結局のところ、何かを食べて、何かを話す生き物だ。その点は、私と何も変わらない。

 

一般に、人間は環境に大きく左右されるものだ。それでも、本書にはどのような環境であっても「自分」の生き方を貫く人達が登場する。きっと著者は、「ヤバい飯」そのものを映したかったのではなく、いつもは目に入ってこない世界の実態を、取材先で出会った人間の強さを、そうした人と出会えた喜びを伝えたかったのかな、と感じた。

 

良い読書体験だった。