セネカ著、中澤務訳。大切な本と出会えた。これからも繰り返し読みたい、と思える本に出会えたこと、そしてそれが2000年前に書かれた本であるということは、私にとって非常に運命的な出来事だ。
以前、「すらすら読める徒然草」を読んで感銘を受けたのだが、その著者の中野孝次氏が読者に勧めていたのがセネカだった。なるほど、確かに兼好法師を読んだ時の感動をまた味わうことができた。これが、古典の持つ力なのか。兼好法師とセネカ、いずれも中野氏がいなければ私が読むことはなかったかもしれない。是非とも御礼を申し上げたいところだが、残念ながら氏は既に亡くなっている。
本書は、セネカが書いた3編の手紙を一冊にまとめたもの。大変読みやすく(これは訳者に負うところが大きい)、また金言ばかりが出てくるので圧倒される。それぞれ、印象に残った内容だけ簡単にメモ。
『人生の短さについて』
人生がいかに短いもので、にもかかわらず、私たちがいかに人生を他人のために費やして(他人に奪われて)いるか。閑暇な生活に入り、自分の人生と向き合い、故人の英知と生き方に学ぶべきである。
『母へルヴィアへのなぐさめ』
どこに暮らすかかは、それほど重要ではない。財産に囲まれて暮らすことが幸福というわけではない。大衆から離れて、自分を頼りにして生きること。
『心の安定について』
自分自身から逃れることはできない。肩書や名誉や財産に背を向け、質素で閑暇な暮らしを求め、自分に率直に生きること。