町田康著。山頭火の入門書のようなタイトルだが、山頭火の俳句自体はそれほど多く登場しない。むしろ、ひとつの俳句ができるまでにどれだけの過程があったのかを山頭火と共に旅をしながら読み解いていく。
しかし本書の著者は町田康。解説しているようで、いつの間にか文章の主語が町田康になっている。山頭火と一体化した町田康が山頭火を語りながら自分を語る。それでいいし、そこにこそ本書を読む価値がある(本書をタイトルだけで手に取った人は読みながら疑問を感じるかもしれないが)。「どうしようもないわたしが歩いている」という歌を「へらへらぼっちゃん」を書いた町田康が語るのだ。
ダメな人間は、ダメな自分でありたいと願っているわけではない。ダメな自分を自覚して、どうにか脱しようともがいても、それでもダメな自分にしか還れない。自分を受け入れつつ、それでもなんとかしたいとあがく、時にはすべてを投げ出してみる。そういう人間がいることは、結局のところ、一言でいえば救いである(頭木弘樹氏の「絶望名言」を思い出しながら)。「私もこれで良いのだ」と安心するという意味ではなく、同志がいることに救いを感じるという意味で。自らを受容する道は、果てしなく険しい。
分け入っても分け入っても青い山