雑記帳

関西在住の中年男性による日々の雑記です。

耳そぎ饅頭

 

 

町田 康著。偏屈を自称する著者が、その偏屈さを治すため、これまで遠ざけていた世俗の様々なことを体験するエッセイ集。その意味では、穂村弘の「現実入門―ほんとにみんなこんなことを?」に似ていると言えるが、著者が町田康である以上、中身は当然全く違う。こちらはこちらで大変面白い。偏屈な人間は何をやっても偏屈であり、そう簡単に変わってたまるか、という意思すら感じる町田節。面白かった。次は「人生パンク道場」を読んでみたい。

 

本書に繰り返し出てきて印象に残ったのは、「食べ物のことに夢中になる人々」に著者が抱く違和感だ。テレビでもグルメ番組が多く放映されるが、性欲に基づく行動について白昼堂々語る人はいないのに、なぜか食欲となると皆で明るく語ることについて、おかしいではないかと著者は指摘する。確かに性欲や睡眠、排せつについて声を大にして語るひとは少ないのに、食べることとなると皆でわいわい盛り上がるのは何故だろう。美味しいものを食べていれば幸せな気持ちになるのだから、それ自体は自然なことだと思うのだが、同じ本能に基づく行為なのに食欲だけは別格扱いだ。

 

 

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