雑記帳

関西在住の中年男性による日々の雑記です。

鎌倉殿の13人 第39話 穏やかな一日

今回は実朝を中心とした話。そして、主人公北条義時の非道さが際立つ話であった(ここまで徹底して悪役を演じる大河ドラマの主役も珍しい)。力のない将軍実朝を恫喝する執権義時。着物も、白い実朝と黒い義時。あれだけ「良い奴」だった小四郎が、よくもこう変わってしまったものだ。

 

今回、実朝は初めて、女性を愛せない自分のことを妻である千世に告白する(迫真の演技だった)。そして同時に、江間太郎(泰時)のことを想っていることが描かれる*1。ただ、この話は今回が初めての描写ではなく、これまでから何度か示唆されてはいた。

 

例えば、第35話「苦い杯」*2。実朝は千世を妻に娶ったが嬉しそうではなく、むしろ辛そうな様子だった。そして、実朝が泰時を眺めるときの、嬉しそうな、でも苦しそうな眼差しの意味。視聴当時はピンとこなかったが、今回の話でようやく意味が分かった。

 

見返してみると、歩き巫女のおばば(大竹しのぶ)の台詞にも伏線があった。妻をめとったが嬉しそうでない実朝の様子を見て、「おまえさん・・・」と言いかけて止める。おそらく、このとき、おばばには妻を愛せない実朝の苦しみが分かっていたのだ。おばばは、そのことを直接言わずに、次の名言を実朝に伝える。そしてそれは、「鎌倉殿の13人」最高の台詞だと私は思う。

これだけは言っておくよ。お前の悩みは、どんなものであっても、それはお前ひとりの悩みではない。はるか昔から、同じことで悩んできた者がいることを忘れるな。この先も、お前と同じことで悩む者がいることを忘れるな。悩みというのは、そういうものじゃ。お前ひとりではないんだ。決して。

 

 

『鎌倉殿の13人』源実朝の秘めた思いが切なすぎる 三谷幸喜の鮮やかな和歌の解釈(リアルサウンド) - Yahoo!ニュース

*1:だから、泰時と仲良くしていた平盛綱に嫉妬して義時の提案を蹴り、義時の怒りを買ってしまった。

*2:そうか、「苦い杯」とはそういう意味だったのか!北条政範が飲まされた毒杯のことを指しているタイトルだと思っていたが、実朝が、婚姻の杯を苦しそうに飲むことを示したダブルミーニングだったのか・・・。