雑記帳

関西在住の中年男性による日々の雑記です。

センゴク一統記(1) ~(15)

 

 

宮下英樹著。「センゴク」シリーズを最初から読み直してみると、その壮大さと密度に驚く。著者も、最初からこれほどの長編を企画していたわけではないだろうが・・・。一応主人公は仙石秀久だが、本作「一統記」全15巻は本能寺の編から秀吉が天下人となるまでを描いており、前半は織田信長明智光秀を中心に、後半は秀吉に焦点が当てられている。

 

この前半がとても良い。織田信長明智光秀の関係を、それぞれの「狂気」という観点からここまで深く掘り下げられるのか、というくらいに丹念に描かれている。「なぜ明智は信長を討ったのか」という疑問を考える場合は、まず「どうして光秀は織田家筆頭家臣にまで昇り詰めることができたのか」という点を考える必要がある。魔王信長と奇人光秀が組み合わさることで生まれた、既存権威や歴史権力に対する「破壊力」を本作では丁寧に描きつつ、次第に歯車がずれていき「下剋上の完遂」というキーワードによって二人の物語が終焉に導れる。著者は、一方を悪者(または愚者)とする安易なドラマ設定に頼ることなく、英雄同士として描き切る姿勢が素晴らしいと思う。大河ドラマ麒麟がくる」の脚本も、安易な現代的価値観に走るのではなく、本作を読まれた上で書かれていたらもっと面白かっただろうに・・・。

 

 

 

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