- 作者: 竹田青嗣
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 1994/09
- メディア: 新書
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ニーチェって人は、なんでこんなにかっこいいんだろう。というのが読後の感想。「ツァラトゥストラ」を読んだときにも思ったが、ニーチェの思想は人を感情的にさせる。例え永遠回帰の思想が受け入れられなかったとしても、それでも現代人がいかに生きるべきか、という根本的な問題に対してひとつの重要なヒントを与えてくれる。それは勿論「力への意志」であり、誤解を恐れずに言えば人生に対するポジティブな姿勢だ。「精神的に向上心のないものは馬鹿だ」という夏目漱石の言葉がふと頭をよぎった。
人間はその欲望の本性(生への意志)によって様々な苦しみを生み出す存在だが、それにもかかわらずこの欲望以外には人間の生の理由はありえない(p42)
ひとことで言ってそれ(=キリスト教会の教義の本質)は、「聖なる神」という“超越的な”理想を向こう側に立て、その面前で自分の「絶対的無価値」を確かめようとする、「比類を絶した」意志の「錯乱」というほかない。(p91)
いったい、人間の未来全体にとっての最大の危険は、どういう者たちのもとにあるのか?それは、善にして義なる者たちのもとにあるのではないか?(p106)
この平等主義、平均化の思想は、一方で他人の幸福を妬む心性、他人がより積極的により大きなエロスを味わうことを許したくないという心性の、現実的な制度化を意味する。(p145)
しかし、そうあることを私は欲したのだ!(p176)
およそ「価値」なるものの根拠は、なんら超越的なものを想定することなく、生命体がもっている根本的衝動としての「力への意志」に定位される。(p213)
ん、ちと引用が多すぎたか。それにしてもニーチェの思想は肌に馴染むなあ。もう少し原著に当たってみる必要があるな。あと、著者の竹田氏の文は非常に分かりやすい。他の思想との関連付けも見事で、学者さんはすごいなあ、と感動した。
続いてこの一冊。
- 作者: 戸部良一,寺本義也,鎌田伸一,杉之尾孝生,村井友秀,野中郁次郎
- 出版社/メーカー: 中央公論社
- 発売日: 1991/08
- メディア: 文庫
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「大東亜戦争はいかなるものであったのか」→「日本軍はどのように戦争を行い、そして負けたのか」→「組織としての日本軍および米軍はどのような特徴があったのか」→「現代における日本の組織にはどのような特性があるのか」ということを学べる素晴らしい本だ。正直なところ読み進めていくと、自身の属する組織の欠陥が次々に浮かび上がってきて憂鬱になってしまったが。
日本軍の最大の失敗の本質は、特定の戦略原型に徹底的に適応しすぎて学習棄却ができず自己革新能力を失ってしまった(p395)
要点はすばりこの文にある。適応しすぎたことが失敗を招いたというのだ。この発想には、驚きと納得で思わず唸ってしまった。この日本軍が教えてくれた貴重な教訓を我々は生かしているか、と自問したとき、何と心細いことか。
- 組織に戦略はあるか。同時に戦略を見直す勇気はあるか。
- 戦略にあった組織体制が作られているか。
- 組織という合理的システムを、人情や根性論で歪めていないか。
- 現実に適応すべく、学習は蓄積されているか。
- 組織の創造的破壊(進化)のための異端者を許しているか。
これらが出来ている組織が世界にどれほどあるのか知らないが、きっと組織を経営している人達は組織論を学んでいるだろうし、そうであってほしいと思う。そして私もいずれ、例え少人数のグループでも率いることがあれば、根性至上主義ではなく、知恵をもって組織運営に挑みたい。