雑記帳

関西在住の中年男性による日々の雑記です。

言語の本質

 

 

今井むつみ、秋田喜美共著。オノマトペから始まる言語の本質に向けた探求の旅。(おそらく誰もが)疑問に思っていた「言語は最初、どのように生まれたのか」「誰が最初に言語を作ったのか」「どのようにして人は言語を身に着けるのか」という問いに対し、本書はかなり納得感のある仮説を提示してくれる。キーワードは「オノマトペ」、「記号設置問題」、「ブートストラッピング・サイクル」、そして「アブダクション推論」である。

 

本書は前半のオノマトペに関する解説が長く、結構細かく、しかもこれが私にはあまり興味が持てない内容だったのでつらかったのだが、そこを乗り越えると次々に言語に関する本質的な問いに進み、話は深くかつ壮大なものとなり、最終的には「人間とは何か」という問いが出てくる。この、まるでミステリー小説を読んでいるような読書感が最高だった。「探求は、より本質的な問いを発見すること」といった名言も心に響く。良い本に出会えた。

 

もう一点。著者は、ヒトがこのような言語を習得できた理由をアブダクション推論に求めている。最初の言語は身体に接地していた(身体から生まれた)と考えられるが、一方でヒトという生き物は、肉体や現在性を離れて、抽象化を模索してしまう。瞑想のコツは「今、ここ」から離れないことであり、不安解消にとっても大切な視点である。しかしながら、人間がその性質上、「今、ここ」を離れてしまう(離れがちな)生き物であり、かつ言葉を使って思考する以上、私たちが「今、ここ」にあり続けることは難しいのだろう。人間を知ろうとすることは、言語について考えることにつながる。またひとつ、自分という生き物について知ることができた気がする。