雑記帳

関西在住の中年男性による日々の雑記です。

我が友、スミス

 

 

石田 夏穂著。読後、爽やかな気持ちでスクワットがしたくなる。しかし本書は、身体を鍛えることの素晴らしさや効能を描いた作品、ではない。それよりも、自分自身を誰かの物差しで評価されたり、他人が決めたルールに閉じ込められるのではなく、自分の評価は自身が決めるという覚悟を描いた本であり、(筋トレを通じて)自分と向き合うことの大切さを語る作品である。

 

指標も、ルールも、所詮は他人が作ったもの。そこから完全に解放されることは人生においてあり得ないが、それを所与のもの、当然のものと考える必要もないだろう。そうじゃないんだ。自分がどうありたいか、自分が何を大切にしたいかは、自分で決めたらよいのだ。

 

物語の最後で、主人公は自分が本当に求めていたものが何かに気づき、全てをリセットする。しかしその破壊は、大いなるカタルシスだった。淡々とした語り口ながら熱い作品だった。そして読後は、やはり筋トレがしたくなる。とても良い本だった。