インセプション

　「メメント」以来のクリストファー･ノーラン監督作品。実に素晴らしい作品だった。

　夢はもうひとつの現実であり、もしくは現実とはこの世に無限にある世界のひとつの現われに過ぎないのではないか、という妄想を、ここまで壮大にかつ「超現実的に」展開した、監督の力量に圧倒された。長尺の作品ではあるが、物語の展開の巧みさと、（ＣＧを使ったにしても）どうやって撮影したのか不思議なほどに迫力ある映像により、あっという間にエンディングを迎える。

　映画の前提となっている、あの不思議な「装置」についての説明を放棄したのは正解だろう。そんな瑣末なところにこだわるよりも、地表が折り曲がる様子を見せたほうが何倍も説得力があるわけで。最後、潜在意識の中を、または意識の果ての世界を数十年間（？）彷徨っていたはずの渡辺謙が、現実に帰ってきた途端にちゃんと電話出来てしまうところ等、超展開も見られたが、この映画に限ってはそれも含めて「面白い」と言って良いだろう。これは映画館で観れて良かった。