陶芸家の神山清子の半生を描いた映画。田中裕子と岸部一徳の組み合わせとは素晴らしい。思い通りの焼き物が出来るまでに「全て」を手放す過程を丁寧に、しかし流れるように美しく演じている田中さんも流石なら、その出来上がった作品を見てほんの一瞬だけ泣き顔を見せる岸部さんも完璧。「捨てきれていない」人が作る焼き物を容赦なく潰す田中さんは圧巻だった。
映画後半は、白血病にかかってしまった息子さんの物語になるのだが、神山清子という人が母である以上、その闘病の過程もそれはもう壮絶なものになる。この芸術家は現実を直視して夢想することを選ばず、そして泣き言も言わなければ決して諦めることもない。さらに、この人は自分のみならず、息子にも甘えを許さない。文脈を無視してある場面だけを切り取ってみれば、冷酷としか言えない台詞が次々に出てくるが、これを「こういう愛もあるのか*1」と感じさせてくれる物語を描いた監督さんはお見事。
夕焼けの風景がとても綺麗で。地味だろうが洗練されてなかろうが、これが良い映画であることに違いはない。そう思う。
賢一、しっかりし。何も怖わない。
先行って待っとり。お母はん、仕事済ませたらすぐ行くから。