雑記帳

関西在住の中年男性による日々の雑記です。

スカーフェイス

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 『カリートの道』が非常に良かったので鑑賞することに。本作品も監督ブライアン・デ・パルマ&主役アル・パチーノのコンビ。比較すると、パチーノはどちらにもそれぞれの良さがあって甲乙つけ難いが、それ以外は脚本もキャストも『カリートの道』に比べると劣ってしまうかな。決定的なのはヒロインの魅力の無さだろうか。主人公トニー(パチーノ)があそこまで惚れこんだ理由がよく分からない*1


 本作品を単独で考えると、圧巻なのはラストの銃撃シーンの迫力ではあるが、それを別枠に入れると、物語としての真価が問われるのは主人公の成り上がりを描いた「観ていて楽しい」前半部ではなく、その陥落ぶりや虚無感を描いた「観ていて落ち込む」後半部なのだと思う。レストランでヒロインが吐露した「私達は負けたのよ」という台詞がとても印象に残った。成り上がること自体が目的である場合、成功という財産が「何故か」重荷になってしまうわけだ。


 しかし一方で、ボートピープルである主人公トニーには、狂犬として全てに噛み付く以外に出来ることは無かったのかもしれない。何も信じず、誰も受け入れず、周りを敵に仕立てて崩壊していく主人公。結局『スカーフェイス』という映画は、物語の観点からも、映画作品としての観点からも、完全にアル・パチーノの単独舞台だったのだ。

*1:後になって気付いたことだが、もしかすると「大した魅力も無い女ではあるがボスの女である」、つまり自分には手の届かないものだからこそ手に入れたいという意味で、成り上がりのひとつの象徴と言えるのかもしれない。