雑記帳

関西在住の中年男性による日々の雑記です。

エンロン 巨大企業はいかにして崩壊したのか?


 一時期は「世界最高の企業」とまで賞賛された巨大企業の凋落を描いた濃密なドキュメント。途方も無い経営規模と、その複雑な不正行為をすっきりとした形に構成しているので、エンロン事件についてほとんど何も知らない私でも大体理解できた。単に一企業の経緯を説明するだけではなく、そこから見えてくる現代社会の様々な問題点(つまり、再発可能性があるということ)を指摘する姿勢が良いと思った。


 特に印象に残ったのは次のようなこと。

  • 結局、利益をどこから生み出しているのかが不明確な企業だ(ライブドアと似ている気がする)。
  • 債務の簿外処理と、時価会計を利用した将来の利益の見込み方が露骨で笑ってしまう。問題は、こんな露骨なことが問題視されなかったという事実。
  • 幹部の儲けっぷり(一部の者は逃げ切っている)と、平社員の悲惨さのギャップがすごい。
  • 個人の倫理観は、一度麻痺すると再生しない。そして、狭い世界に閉じこもってしまった者は、その「世界の倫理観」を離れて思考して行動することは非常に難しい*1。だから、不正を防ぐにはシステムが必要である。・・・という一般的教訓がエンロン事件からも得られる。のだが。
  • 一方で、上記の「システム的な対応」を根底から揺さぶったのもエンロン事件。世界有数の会計事務所、弁護士事務所、メジャー銀行ら全てがグルになれば、構造上問題ないように見せることが可能になる。
  • それでは、そうした不正を監視する能力は政府にあるのだろうか。少なくとも、「迅速」に取り締まることは絶対に無理だろう。規制緩和は単に規制をしないことを意味するのではなく、言い換えれば「事前規制」から「事後評価」への切り替えなのだが、それにかかる政府の負担は、後者の方が断然大きい。
  • カリフォルニア電力危機の事例を見て思ったのは、規制緩和を進めると企業と政府の力関係は大きく崩れるということ。結果的に公共の利益が向上することもあるだろうけれど、規制緩和について考える際には、「誰が得するのか」という視点で考えることを忘れてはならない、という教訓。それにしても収益確保のための計画停電が本当に行われていたのであれば、さすがにゾッとする。
  • ブッシュ大統領を評価するアメリカ人を見てみたい。
  • シュワルツェネッガー知事を評価するアメリカ人を見てみたい。
  • エンロンの株価はたった24日で崩壊した。そして、ほとんどの証券アナリストは直前まで「強気」「買い」を推奨していた。
  • ask why, asshole.