筒井 康隆著。「そうか、幽遊白書の海藤の能力はこの本が元ネタだったのか」と、比較的どうでもいいことに感動しつつ、軽い気持ちで本書を手に取る。しかし読み進めていくうちに、筒井康隆という小説家の持つ言葉の力に圧倒された。
そもそもの設定の面白さ、実際に音と言葉と存在が消えていく哀しみ、それでも紡ぎ続ける豊富な言語力と展開力。日本語は豊かで素晴らしい言語だ、というよりも、筒井氏がすごいと言うべきだろう。
突然に始まる著者の青春時代の独白も良い。制約があるからこそ語れる話というものがあり、そうしたものは大上段に構えて吐露するのではなく、本書のようなフィクションの体裁をとっているからこそ語れる真実がある。
面白かった。