
- 作者: 遠藤周作
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 1981/10/19
- メディア: 文庫
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遠藤周作著。江戸時代初期におけるキリスト教の弾圧という舞台を借りながらも、この話の本質はもっと奥深いところにある。人間の弱さと神の救いについて、物語を展開しながら丹念に掘り進めていく。
弱い人間は一体どうすればよいのか。何故人間は苦しまなければならないのか。神の存在について疑問を抱きつつも、信じるという行為を捨てられないのも、また人間の弱さなのかもしれない。
この作品に限らず、遠藤周作の描く神は、人間に寄り添い、共に苦悩する神だ。とても有り難い存在だと思うし、それ自体の崇高さは否定しないけれど、人は救いや助け、天罰や神罰を期待してしまうものだし、だからこそ神を畏怖し、宗教を信じるのではないか。
この作品の中では、多数の信者が苦しみながら死んでいくが、神は助けてくれない。共に苦しんでくれているのかもしれないが、それに気付かない人間にとっては沈黙しているのと何ら変わらないだろう。そうであれば、少なくとも現世において、正しき存在である神は、人間の邪悪な心に抗えないことになる。その限りにおいて、この世に生きる人間にとって、神への信仰を人生の第一目標にすることは困難だと私は感じる。