雑記帳

関西在住の中年男性による日々の雑記です。

萩1日目

 新山口駅前からバスに乗り、のどかな田園景色を眺めること約80分、萩に着いた。遠くに海が見える。


 何はさておき、長州藩に来たならまずは松下村塾である。東萩駅から市内を循環するバス*1に乗って旧松本村へ向かう。松下村塾の辺りは「松蔭神社」として博物館と共に整備されており、松蔭先生は神棚に据え置かれて喜ぶ人でもあるまいに、などと思いながら中に入る。


 幕末に長州藩から数々の人材を輩出した松下村塾とは、一体どのような建物なのだろうと思ったら、なんと部屋がふたつしかない、小さい粗末な平屋であった。部屋はそれぞれ10畳と8畳。吉田松蔭がこの私塾で教えていたのは実質2年半ほどの短い期間であり、先生と弟子達はこの小さな小屋で生活を共にしながら教育が行われていたそうだ。こんな小さな小屋で、高杉晋作久坂玄瑞伊藤博文らが学んだのか・・・。「松下陋村といえども誓って神国の幹となさん」、松蔭先生のこの言葉をつぶやきながら、私はこの建物の小ささにこそ深く感動していた。





 松蔭神社を出て、伊藤博文旧宅などを見ながら山手に進む。旧松本村の住居は、どこも花で綺麗に飾られており、通りをぶらぶらと歩いているだけで心が落ち着く。いわゆる観光名所だけではない、「普通の場所」がこれほど綺麗な街はそうそう無い。萩という土地の文化水準は非常に高いのだろう。素晴らしい。


 小山を登りきると、吉田松陰高杉晋作の墓に出る。お二人に線香を供え、拝む。幕末の偉人の墓を拝むと、何故か涙ぐんでしまうな。振り返ると、眼下に萩市街を見渡すことが出来る。海と山に囲まれた、小さな街だ。松蔭先生もこんな風に街を、海を見ていたのだろうか。

  • 親思ふ心にまさる親心けふのおとづれ何ときくらん
  • 身はたとひ武蔵の野辺に朽ちぬとも留置まし大和魂

 市街に戻り、散策している間に日が暮れる。宿は「萩の家」なる民宿。質素な宿だが、料理が非常に美味しくて、他の旅行客とも会話が弾む。お互いに知らない人同士であり、おそらく今後一生会わないであろう人だからこそ、無邪気に話せてしまうこともある。不思議な夜だった。

*1:東回りのバスは「松蔭先生」、西回りのバスは「晋作くん」という名前らしい。「くん」って。