雑記帳

関西在住の中年男性による日々の雑記です。

世に棲む日日

世に棲む日日〈1〉 (文春文庫)

世に棲む日日〈1〉 (文春文庫)

世に棲む日日〈2〉 (文春文庫)

世に棲む日日〈2〉 (文春文庫)

世に棲む日日〈3〉 (文春文庫)

世に棲む日日〈3〉 (文春文庫)

世に棲む日日〈4〉 (文春文庫)

世に棲む日日〈4〉 (文春文庫)


 今年のGWの課題図書は、先日の萩旅行以来*1どうしても読んでみたくなった「長州モノ」である。松下村塾を見たとき、漠然と「彼ら」の生き様を知りたい、知らなくてはいけないと強く思ったのだ。以後、幕末の思想家吉田松陰と革命家高杉晋作に関する本は無いかな、と探していたら司馬遼太郎氏のこの作品を発見。連休で読むのにちょうど良い分量であった。


 師・吉田松陰と、弟子・高杉晋作。ふたりとも20代、若くして死んだ英雄である(それは、幕末においてはむしろ一般的ですらあるが)。他にも共通点はたくさんある。強烈な自我と志をもっていたこと。行動主義であったこと。広い、大局的でかつ根本的な視点を持つことができたこと。異端であり、人々から理解されることは少なく、それでいて同時に強い憧れの対象となったこと。そして、名言を多数残していること。要するに、やはり英雄であったということか。


 もちろん、違いも多々ある。その中でも最たるものは、松蔭先生はたくさんの失敗を重ね続け、晋作は派手な成功を「メリハリ」をつけて手に入れているということだろうか。松蔭先生は、その数々の失敗というか不運というか、読んでいて切なくなるほどにツいていない人である。ロシア渡航の失敗、アメリカ渡航の失敗、藩からの追放、そして死刑。それでも、松蔭先生は人を信じ、己を信じ、志を育てていった。「狂」を信念としてラディカルに生きる姿勢は、果てしなく格好良い。

「人生において大事をなさんとする者は、和気がなければなりませぬ。温然たること、婦人、好女のごとし」
「言葉つき丁寧にして声低からざれば大気魂は出づるものにあらず」
「計(はかりごと)いよいよ違って、志いよいよ堅し」
「死して不朽の見込みあらばいつでも死ぬべし。生きて大業の見込みあらばいつでも生くべし」
「人の一生に春夏秋冬あり」

 

 一方、稀代の革命家高杉晋作は、一流の「役者」であった。演じる舞台と演目を選び、一瞬で世界を我が物として、芝居が終われば消えてしまう。英国公使館の焼打ち、将軍家茂暗殺計画(これは未遂)、奇兵隊の創設、下関戦争の講和、長州佐幕政府からの政権奪取(奇兵隊による革命)、そして数々の逃避行。全てが伝説的な事件ばかりで、英雄と言わざるを得ない。

「勤王の志士松蔭吉田寅次郎の殉国の霊がまかりとおるのだ」
「三千世界の烏を殺し ぬしと朝寝がしてみたい」
「いよう、征夷大将軍
「いまから長州男児の肝っ玉をお目にかけます」
「生とは天の我を労するなり。死とは天の即ち我を安んずるなり」
「愚者英雄 ともに白骨 まことなるかな 浮世の値三銭」
「おもしろきこともなき世におもしろく」