雑記帳

関西在住の中年男性による日々の雑記です。

Love Actually


 ストーリーは終始、お気楽でご都合主義の展開だ。「ずるい」、「そりゃあり得ないでしょ」という場面が何度も何度も出てくる。そしてそれにも関わらず、これを観てほのぼのしたり、楽しめたり、グッときてしまう自分がふがいない(?)。キャラクターの設定、何気ない会話や仕草、そして効果的過ぎる音楽の使い方(きっと映画館でオリヴィア・オルソンの"All I want for Christmas is you"を聴いたら鳥肌モノだったろう)にやられてしまった。クリスマスという限定条件の下では、こういう楽天的な映画も悪くないか。いや、やはり総合的に考えると、これは素晴らしい作品だなと思う。「若い美男美女のドラマチックな恋愛劇」という日本的な物語が嫌いなので、いわゆる恋愛モノは敬遠していたのだけれど、この映画は全然違う。


 いくつものドラマが展開されるのだけれど、どれも素晴らしい。ジャックとジュディの純朴な恋愛も、老いたロックスターのビリー・マック(ビル・ナイ)がマネージャーに照れながら感謝の気持ちを伝えるシーンも、ダニエル(リーアム・ニーソン)がどこか素っ気無い義理の息子・サムと関係を深めていく場面(理想的な父親像が描かれていると思う)も、旦那の浮気に傷つくカレン(エマ・トンプソン)のものすごい演技力(必見)も、いずれもが作品の目玉となるような印象をもたらしてくれる。だが、最も私の気に入ったのはジュリエットキーラ・ナイトレイ)に対するマーク(アンドリュー・リンカーン)の「失恋」だ。なかなかここまで格好よくは振舞えないものだが、彼が最後に発した"Enough"という台詞にはしびれた。


 もちろんヒュー・グラントも流石に上手い。ちなみにDVD特典で監督と役者による解説(非常に下品で面白い)を聞くことができるのだが、ヒュー・グラントの指摘は非常に細かい。映画マニアの視点を持つ役者だ。