雑記帳

関西在住の中年男性による日々の雑記です。

還暦からの底力―歴史・人・旅に学ぶ生き方

 

 

 

出口治明著。いわゆる「定年後の過ごし方」を説くような本ではなく、年齢なんて関係ない、好きなことをしろ、迷ったらしろと生き様を前面に出した本。「年功序列を打破せよ」「若者が年寄りを支えるのではなく、年寄りが若者を育てよ」といった主張を、70歳を過ぎた著者が唱えるところが格好いい。

 

著者は、年寄りこそ仕事をすべきと言う。このことはいわゆる「定年本」でも言われていることで、心身の健康のためには仕事があることが望ましいようだ。「今日行くところがあること」「今日すべき用事があること」をセットで用意してくれるのが仕事だというわけだ。私のように「早く仕リタイアしたいな」と考えている人間には耳が痛い。

 

また、「エピソードではなく、数字とロジックで議論せよ」というのも繰り返し出てくる主張。人間は感情で動く生き物なのだからこそ、(感情を揺さぶる)エピソードに流されて判断するのではなく、数字(ファクト・エビデンス)を基にして論理的に考えよ、ということだろう。「愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ」というビスマルクの名言とも共通する。こういう立場を貫徹するあたりが、著者が多くの人から支持される所以なのだと思う。

 

いつだって、「今」が一番若い。年齢にとらわれるのではなく、何がしたいか、何に興味をもっているのか、どんな人間になりたいのか、ということを死ぬまで追い求めるのが前向きな人生なのだと思う。いい本だった。