銀と金 (6) (双葉文庫―名作シリーズ (ふ-15-06))
- 作者: 福本伸行
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銀と金 (7) (双葉文庫―名作シリーズ (ふ-15-07))
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銀と金 (8) (双葉文庫―名作シリーズ (ふ-15-08))
- 作者: 福本伸行
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著者は、風呂敷を少し広げ過ぎたのかもしれない。結局のところ福本氏は「勝負」を描く漫画家であり、「政治」を描く型ではないのだ。森田という準主役を引退させることで、必然的に作品の終局を導いてしまったのだが、そういう意味では最後の競馬編は蛇足であろう。いや、勿論面白いのだけれども。
・・・等と、色々ケチをつけることは簡単だが、森田の引き際、そしてそれに繋がる神威家編は実に素晴らしい。鉄骨渡りのカイジよろしく、人間の醜悪さや哀しさ、やり切れなさというものを見事に描き切っている。もしかしたら、当初は森田鉄雄が神威家の第五子として跡取りになる予定だったのかもしれないが*1、著者は徹底的に泥沼を描くことで森田を絶望に落とし込み、「悪役の格好良さ」などに見切りをつけさせて、森田鉄雄という男にとって必然となる幕引きを導いた。
福本漫画の核となるのは、表面的には確かに「勝ちと負け」なのだけれども、著者がそれを通して描きたいのは、勝負の奥底にある「人間というものの正体」とか「人としての真っ当さ」なのではないか。そうした意味において、神威家編の最後に森田が感じた絶望や違和感というものは本作品において最も重要な場面なのだ。
*1:これは、平井銀二が以前に話していた、「老人の条件」や「莫大な遺産」などからの類推。