- 作者: 小島寛之
- 出版社/メーカー: NHK出版
- 発売日: 2004/02/29
- メディア: 単行本
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この本のタイトルからは、まさか自分が感動して涙ぐんでしまうことになるとは予想だにしていなかったが・・・。数学の本、というよりはモノの考え方の根っこの部分についての本、つまりは哲学書だというべきだろう。学校で習った確率についての知識なんて、(大数の法則を信じるという前提に立たなければならないと言う点で)一面的なものだったのだなあ、と思い知らされた。ロールズの正義論の解説を読めば分かることだが、未来は予測できないし、その予想に対するオッズすら分からないのであれば、結果から振り返って安易に「自己責任」なんて言葉を使うのは勝者の理屈なのだ*1。
実に多様な話題が取り上げられており、おそらくはいずれも入門編のレベルにとどまっているのだろうが、このテーマに全くの素人である私には理解するのが一苦労であった。著者の小島寛之氏は、難しい話を噛み砕いて分かり易く説明する能力が非常に高い、というか、「辛抱強く」教えてくれる人だと思う。ありがたいことだ。
特に印象的だったのは、集団的不可知性(と、その対になるコモン・ナレッジ、具体的には株式暴落についての理屈)についての話と、論理的選好理論において公共財が果たす公理系修正の役割*2かな。ナイトの不確実性回避の理論も面白かったし*3。・・・いや、もう一度読み直さないと理解が危ういところが結構あるかもしれない。