京都文化博物館に行ってきた。休日にも関わらず、開館時に並んでいたのは10人ほど。行列が出来ていると思い込んでいたので拍子抜けしたが、おかげで落ち着いてゆっくりと観る事ができた。内容は、「豪華とか華美とか贅沢というものを形にしたらこうなりました」という感じ。宝石でコテコテに覆われた色んな物が陳列されていた。率直な感想としては、私にはほとんど全く美しさを感じられなかった。何故そう思ったかを説明すれば次のようなことだろうか*1。
飾られていた物は、確かに豪華で、派手で、もちろん決してみずぼらしくはないのだけれど、しかし、それを身に着ける人を美しくする(もしくは物それ自体が美しく完成される)という目的においてはほとんど失敗しているのだ。様々なところで解説されているように、これらの物の第一の目的は皇帝であるスルタンの権威を見せつけることにあるのであって、お洒落を楽しんだり芸術の道を極める等ということは二の次だったのだろう。だから、全体のバランスや統一感を壊してでも、無理矢理に多種多様な宝石を嵌め込もうとする。従って、時も場所もかけ離れた私が受け取った印象は「すごいな」であっても「素敵だな」とはならないわけだ。タグをつけろと言われたならば、「これはすごい」と「これはひどい」のどちらをつければ良いのか迷うような物もたくさんあった。
放言だが、イスラム文化の美しさは「模様」にあるのであり、宝石はその美しさを乱しているのではないだろうか。遠くにいる人へ皇帝の権威を伝えるには「光り輝く石」の持つ威力に頼る方が良いのかもしれないが、物自体から感じ取れる美しさは(宝石の無い)中国からの陶磁器類の方が勝っていたと思う。・・・まあ、私が基本的に宝石に対して肯定的評価をしていないから、そう感じただけなのかもしれない。個人的にはシンプルで、素材そのものの美しさが表に出ている物が好きなので。
個別の印象はそれぞれこんな感じ。
- コーラン:素晴らしい。必見。私が今まで観た書物の中で、最も豪華な本であった。
- 武器類:実用的かどうかは分からないが、綺麗な模様が描かれた鉄砲、剣、盾には美しさを感じた。あと、ドラクエの世界でしか知らなかった棍棒の実物が見れて満足。鉄製だったけれど。あれならば「どうのつるぎ」よりも攻撃力は高いかもしれない。
- ターバン飾り:計500カラットのダイヤモンドはさすがにすごい。凝視してもそのすごさは分からないけれど、少し離れて、ゆっくり左右に動きながら観るとそのすごさが分かる。王様とはこういうものを身に纏う存在なのかと思うと、羨ましさを抱くというよりは、単に「別世界の御人なんだな」とだけ感じる。
- 金のゆりかご:近くで見ると本当にグロテスク。ただ、これも遠くから見ると豪華さや立派さ*2が感じ取れる。ターバン飾りを観ていても感じたのだけれど、展示方法が適切だと思った。部屋の全体は薄暗くして、展示物にのみスポットライトをあてることで、これらの持つギラギラした輝きが良く伝わるようになっている。
1時間半くらいで観終わり、ついでに常設展も観てきた。特別展のチケットで両方見られるとは。常設展についても、物の見せ方というものは大事だなということを実感した。こういうことも学芸員さんの仕事なのだろうか。良い仕事をされているな、と思った。