雑記帳

関西在住の中年男性による日々の雑記です。

人生生涯小僧のこころ

人生生涯小僧のこころ

人生生涯小僧のこころ


 塩沼亮潤著。千日回峰行および四無行という超人的な苦行について語る本でもあるが、あくまで主題は、行を通じて人生にいかに向き合うかということ。著者は、苦行の過程で得た覚りについて、自分という存在のちっぽけさ、感謝の心、そして人と人とのつながりの大切さ等、平易な言葉で語られているが、それも大阿闍梨になられた行者が発すると重みが(言葉の背景が)違う。それはきっと、ソクラテスの「善く生きる」と同じ話だろう。


 苦行について語られていた内容のうち、特に印象に残ったのは、「困難に挑戦する前に、明確な目標設定が必要」という話、また「困難な状況を日常と思う」という克己の姿勢、そして「どのような苦難によっても自分の態度は影響されない」という超然たる決意であった。


 嗚咽したり慟哭することこそ無かったが、読み進めて行くうちに精神が澄み渡るような感じで、透明で清らかな涙が何度が頬を伝わった。人生は素晴らしい、と、少なくとも読書後はそう思えた。