土日は混んでいるだろうから、と仕事を午後から休んでいったは良いが、結局2時間待ちであった。明日もしくは明後日に行く人は、どうせ待つなら開館2時間前に行くのはどうだろう。待ち時間は変わらなくても、中の混雑具合は大分違うだろうから(私もそうすれば良かった)。どうせ最後の展示室に入ってしまうと皆なかなか出てこれないだろうし、早いもの勝ちということで。
まあ、それはさておき、若冲である。プライスコレクションの感動が蘇る。いやー、素晴らしい。最高。
若冲の魅力は、生きとし生けるものの躍動感や美しさを伝えてくれることにあると思うのだが、今回もそれを十分に堪能できた。壁面画の葡萄や芭蕉の構図の大胆さと力強さにも呆然と見とれていたが、最後の展示室では感動して涙が出てしまった。釈迦三尊像を取り囲む動植綵絵30幅。なんて贅沢な空間だろう、と恍惚として立ち尽くす。小動物や花に、あそこまで美を見出すことが出来る。その眼力は、おそらく技術を積み重ねても凡人には到達できない境地であると思われるが、若冲の描く絵を見ることを通じて私のような凡人にもその美しさを感じることが出来るようになる。芸術家が偉大である所以だろう。
鶏を格好良く描かせたら若冲の右に出るものはいないだろう。美術の世界はとんと疎いのだが、彼の絵を見るとそう思う。鶏ってあんなに力強くて、鮮やかな色彩で、緻密な模様を身にまとっているのだ、と驚いてしまう。ということで、私にとって若冲と言えば鶏なのだが、動植綵絵30幅の中で最も私の気に入ったのは、芦鵞図。鵞鳥を繊細に(そしてユーモラスに)描きつつ、背景の芦は大胆な筆遣いで力強く描いている。素敵な絵だと思った。
最後に。宮内庁保有の美術品について。今回の企画展は、動植綵絵を保有している宮内庁の協力があって実現した、120年ぶりのイベントとのことだが、これほどの観客を動員する魅力をもつ作品を皇室(宮内庁)が保有することには少し疑問を感じる。廃仏毀釈のために献上されたという過去の経緯をどう考えているのだろうか、という疑問と、若冲の意思を尊重するならば釈迦三尊像と動植綵絵は(出来れば年に1度は)セットで保管しておくべきではないのか、ということ。もっとも、上のように感じる一方で、文化財は現代の我々のためだけにあるものでは無いのだから、保管能力および修復能力の高いところが預かるということに合理的な理由もあるのかな、と思わないでもないのだが。日本人はこれまで日本の貴重な文化財を海外に売り飛ばしてしまったという実例がたくさんあるわけだし。まあ、難しい問題なわけだが、私の思いとしては単純で、また今回のような若冲展があれば嬉しい、というそれだけのものなのだ。本当に行って良かった。
スパムみたいで申し訳ないのですが、リンクを勝手に貼らせていただきます。