雑記帳

関西在住の中年男性による日々の雑記です。

漢詩百首

漢詩百首―日本語を豊かに (中公新書)

漢詩百首―日本語を豊かに (中公新書)

 

 高橋睦郎著。選首とその解説に独特の味がある、漢詩入門書のひとつ。個人的に最も気に入ったのは、道元の作品。著者の読み下し文だと実にリズムが良く、諸行無常の境地が明確に伝わってくる。

生死憐れむべし雲の変更
迷途覚路 夢中に行む(すすむ)
唯留むるは一事 覚めて猶記ゆ(おぼゆ)
深草閑居 夜雨の声


 最終句である「深草閑居夜雨声」の冷徹さが素晴らしい。次の詩も、同じく道元作。

世の中は何にたとへん水鳥の
嘴振る露にやどる月影


 色即是空、空即是色。嗚呼。