雑記帳

関西在住の中年男性による日々の雑記です。

知識人とは何か

知識人とは何か (平凡社ライブラリー)

知識人とは何か (平凡社ライブラリー)


 著者サイードによると、知識人は狭い世界に閉じこもる専門家では無く、そもそも何らかの組織に所属するものであってはならず、様々なものを相手に「否」を唱える(もしくは疑問を投げかける)者であるべきだ、ということになろうか。・・・しかし、そのような者は基本的に世間からすれば厄介者であり、そうした道を目指す奇特な人は少ないだろう。そして、そうであるからこそ、こうした短期的には厄介だけど長期的には必要な人が存在する社会は、「そうした存在の意義を理解する知性がある人」が多いという意味で、豊かだと言えるのかもしれない。
 

 もっとも、この本で著者が扱っているテーマは、知識人に限定した話だと解釈しなくても良いのかもしれない。いつだって、そしてどこにだって、社会の「外」や「境界周辺」でしか住めないはぐれ者はいるわけで、そうした人は新しい社会の枠組みを作るか、もしくは「不要の要」として生きるしかない。社会の一般的な価値観とどうしても相容れない場合に、自分の価値観を修正することができない者は、異端者として社会から疎んじられつつ自身の生き様をさらす。けれども、その「普通ではない」価値観が社会バランスのために必要な場合も出てくるわけで。そうやって、わずかながら報われる部分も出てくるだろう。