- 作者: 村上龍
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 1984/01/09
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「限りなく透明に近いブルー (講談社文庫)」の暴力性がより深く、より規模の大きなものとなって帰ってきた。私はなんとなく松本大洋の「鉄コン筋クリート」を思い出しながら読んでいた。
なるほど、閉塞感とはこのように説明されるべき言葉だったのか。「閉じ込められた」ままで、視点や考え方や歩く方向や住む場所を変えても、結局閉じ込められたままなのだ。「役割」を何度変えても、「存在」が現われることは無いことと同じくね。
私は誰にも必要とされておらず、彼らは私をコインロッカーの中に閉じ込める。だとしたら、私にとって生きるということは、破壊することに他ならない。もっとも、破壊した後に「生」とやらが現われるのか、と考えてみると絶望的な気持ちになるだけなのだけれども。
それでも、一度「暴力をもって破壊する」行為が始まれば、そこには思想も言葉も、そして文明も無意味になる。主人公がコインロッカーで生まれたからといって、破壊する「権利」などという文明的なものが与えられるわけもない。ダチュラの効力に全てを委ねて、ただ破壊し、殺すのだ。閉塞感の打破というものがそうしたことを指すのであれば、惨劇はいつも、私達の足許にあるということになるだろう。