雑記帳

関西在住の中年男性による日々の雑記です。

カモナマイハウス

 

 

重松清著。空き家をテーマとした家族物語で、テーマにも興味が持てるし、流れるように話が展開して読みやすい。

 

時折ぐっとくる台詞なんかもあって、そこはさすが重松清だと思ったのだが・・・、ただ、どこかひっかかる、というか、物語全体が心に浸み込んでこない。字面だけ表面的になぞってしまい、登場人物が印象に残らない。なんでだろう、と原因を考えてみたところ、登場人物の言動の多くが、物語の展開上の要請を受けたものであることに気づく。小説なのだから当然のことなのかもしれないが、しかし著者が展開させたいように登場人物を動かしたり語らせている(便利使いしている)ことに気づくと、読者としては白けてしまう。物語は物語であることを読者に悟らせてはいけない。単なる好みの問題かもしれないが、私は明確な自己を持った登場人物が、まるで自らの意思に基づいているかのように好き勝手に動き、発言している小説が好きなのだ。