雑記帳

関西在住の中年男性による日々の雑記です。

増えるものたちの進化生物学

この記事を読んで、「読んでみよう」と思ってから一カ月以上経ってようやく読了(遅い)。自分では進んで手に取らないような本でも、熱量のあるレビューがきっかけとなって出会いが生まれるのだから、書評はありがたい。

 

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市橋 伯一著。論理は明確で、人間という生き物を単純化して説明してくれる。ダーウィンを持ち出すまでもなく、人間は「(神が創った)特別な生き物」ではなく、普通の生物の一種である。そう捉えるからこそ理解できる側面がある。数十億年前に奇跡が生じ、この地球で「増えて遺伝する」生き物が誕生した。我々人類はこの「増えて遺伝する生物」の末裔である。少産少死の戦略をとることで繁栄したが、現代に生きる私達には弊害も出ている。

 

よく言われる話だが、人類は数万年の間、狩猟生活をしてきたので、身体の構造としてはその頃のまま変わっておらず、現代の生活とは合致しないところがある。本書でも、長生きし過ぎることから生じる苦しみも触れられていた。確かに、「増えて遺伝する生物」という特徴からすれば、私のような中年男性には役割(生きる意味)はもはやないのかもしれない。しかし著者は、生物としての様々な特性を備えている(思考まで過去からの考え方を遺伝してしまっている)としても、それでも人間の生き方は自由に選択できると主張する。私が死んでも、何かが残る。未来に何も残らないとしても、今の「自分の何か」は増やせるし、世の中に何らかの影響は与えられるだろう。生き様は、それぞれの自由だ。