雑記帳

関西在住の中年男性による日々の雑記です。

世間の目

 

世間の目

世間の目

 

 

佐藤 直樹著。本書は、「世間」というキーワードを用いた日本人論である。肝心なところはほとんど阿部謹也氏の著作群に頼ってはいるが、著者の分析は鋭い。15年以上前に書かれた本だが、著者のいわんとするところは、今でも本質的な日本人論として通用する。

 

「贈与・互酬の関係」を何より大切にするところ、「世間の秩序」を守ることが個人より優先されること*1、そもそも西欧型の「個人*2」など存在しないこと等、日本人の性質をうまく切り取れていると感じた。

 

日本人が世間の中で生きている以上、学校も、会社も、メディアも、インターネットも、世間を解体するどころか、世間を補強し、再生産する存在にしかなれないだろう。日本人を変えることができるのは、黒船(外圧)だけである。それが待っていられないなら、日本から脱出するより仕方ない。

 

本書で残念だったのは、著者の独特な言葉遣いに私が馴染めなかったこと。何故かひらがなとカタカナが濫用されていて、読みにくいことこの上なかった。普通に漢字を使えば意味が通るところを、わざと(?)ひらがなやカタカナで記載し、しかもその理由がさっぱり伝わってこないので、かなりストレスを感じた。なお、副題には「なぜ渡る世間は鬼ばかりなのか」とあるが、本文でその解答は示されていない。内容は悪くないのだが、変な本だった。

*1:人間関係の序列が重んじられ、また目立つ者は叩かれ、馴染めない者は村八分にされる。

*2:強烈な自己意識の下、常に自己を主張し続ける存在として、「社会」と相対する人のこと。