雑記帳

関西在住の中年男性による日々の雑記です。

「空気」を読んでも従わない

 

 

鴻上 尚史著。これまで読んできた著作と内容は変わらないが、若い人向けの書き方になっている。昔、年輩の者の知恵が特に有用だった時代の名残なのだろうが、いまだに先輩後輩文化が色濃く残る日本社会というのは、なんとも不思議だと日本人でも思う。

 

著者は、欧米流の強い自己主張を支えるものとして、「キリスト教」と「自尊意識を育てる教育」を挙げている。前者は、弱い人間を支える絶対的なものが必要ということ、後者は、「貴方はかけがえのない存在、だからこそ貴方の意見を聞かせてほしい」という教育文化があるようだ。

 

逆に言えば、そうした背景のない日本社会において、世間はもう死んだ、自己主張せよ、結果については自己責任で、と個人に多くを求めたところで得られるところは少ないだろう。絶対的な一神教は存在せず、つまり個人が頼れる精神的なバックボーンも、教会のように共助をよびかける社会文化制度もなく、それでいて「世間」が壊れていく日本。村落共同体や強固な会社への帰属など、良くも悪くも、これまで個人を支えてきた「世間」を失い、これからの日本人はどのようにして生きていけばいいのだろうか。