雑記帳

関西在住の中年男性による日々の雑記です。

予想どおりに不合理

 

 

ダン・アリエリー著。「行動経済学」という言葉にとらわれる必要はなく、錯視(錯覚)に代表される、人間の性質上そうなってしまう傾向を教えてくれる本である。経済学というよりは、心理または人間そのものを研究する分野とでもいうべきか。

 

評価はどうしても相対的なものになってしまうこと、「無料」の前に人は合理的でいられないこと、性的興奮をしている人間に対して理屈は無効であること、選択肢を失うことを過度に恐れることなど、本書では人間の非合理性をこれでもかと示してくれる。

 

もちろん、だからといって人間に合理性がないことにはならない。著者は、人間には合理的でない側面が間違いなくあるのだから、それを分かった上で行動した方が賢いんじゃないかな、と主張しているのだろう。

 

本書に見られるような研究成果は、おそらく学問として公開される前から実務面において、営業や広告を含めたマーケティングに活用されていただろうし、何より詐欺の基本技術として使われていたのだと思われる。

 

特に印象に残ったのは、この世には、社会規範が支配する社会と市場規範が支配する社会の二種類が存在することを書いた第4章(副題:なぜ楽しみでやっていたことが、報酬をもらったとたん楽しくなくなるのか)だ。このふたつの世界を混ぜてはならない、混ざった場合は市場規範が支配する社会しか残らない、という結論は大変に興味深かった。