雑記帳

関西在住の中年男性による日々の雑記です。

百円の恋

 

百円の恋 [DVD]

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 武正晴監督、安藤サクラ主演。観てよかった。嚙み切れない肉を食べながら二人の心身が近づく場面には心を打たれたし(理由はうまく言語化できない)、主人公がボクシングを通じて変わっていく様は格好いいし、後半の盛り上がり感が半端なかった。シャドウボクシングのシーンにはとにかくしびれた。最後のカメラ長まわしのシーンも素敵な余韻があった。

 

 主人公は、最後に試合で負ける。しかし、大事なことは勝敗ではない(彼女は負けて悔しくて泣くんだけれども、それでも大事なところはそこではない)。中島みゆきも言っている。「勝つか負けるかそれはわからない。それでもとにかく戦いの出場通知を抱きしめて、あいつは海になりました」だ。何かに打ち込む、ということ。人生の一部を注ぎ込む、ということ。

 

 私は基本的に、ダメな登場人物が多い映画が好きで、本作は大変気に入ったのだが、妻からすると「そういうリアリティは追い求めなくても・・・。映画くらい素敵な雰囲気に浸りたい」とのこと。男女で鑑賞する作品の選択は、いつも難しい問題だ。

 

 

 


クリープハイプ「百八円の恋」MUSIC VIDEO

夜明けのパトロール

 

夜明けのパトロール (角川文庫)
 

 

 ドン・ウィンズロウ著、 中山宥翻訳。いつものウィンズロウ節は少しだけ影を潜め、従ってハードボイルド感は弱めで、その分「甘さ」があるのは、若くて男前の主人公ブーン・ダニエルズの設定に由来する。同じサーフィンを愛する男でも、フランキー・マシーンとは背景が違い過ぎる。

 

 本作も読みやすいし、読了後の満足度は決して悪くないのだが、やはりウィンズロウの本を読むからには、脳が沸騰するような興奮が欲しいと思ってしまう。結局、「犬の力」が凄すぎたのだ。ということは、次は「ザ・カルテル」を読むしかない、ということか。間違いなく睡眠不足になるだろうが・・・。

 

中間管理録トネガワ(4)

 

中間管理録トネガワ(4) (ヤンマガKCスペシャル)

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 影武者が面白すぎる。こんな熱々のステーキを・・・手で・・・!

 

 

 

 

 

歯医者

 歯科医へ定期的に行くのを怠っており、1年以上間隔が空いてしまった。長男の検診という意味もあり、一緒に行ってみたところ、歯周病の進行を告げられてショックを受ける。歯石除去をしてもらいながら説明(説教?)を受けたところ、歯肉ポケットが広がると、歯石が奥につきやすくなり、取りづらくなるそうだ。今日もものすごく痛かったが、まだ引き続き通院しなければならないらしい。最終的には歯が抜ける、と言われると選択の余地もなく。このときだけは、歯磨きを丁寧にしようと思いを新たにするのだが。

川の底からこんにちは

 

川の底からこんにちは [DVD]

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 石井裕也監督、満島ひかり主演。どん底からの開き直り、そのエネルギーと疾走感は力強く爽快で愉快。登場人物は概ね「ダメ」な人たちだが、まあ、映画に限らずだいたいが皆「中の下」ということで。

 

 脚本も素晴らしいが、満島ひかりさんの演技も良かった。個人的には「社歌」のシーンが最高。人生に気合をいれたいとき、また観たくなる映画だ。

 

ストーナー

 

ストーナー

ストーナー

 

 

  ジョン・ウィリアムズ著、東江 一紀翻訳。地味で、暗くて、しかし素晴らしい小説だった。生きることの熱量、そしてその裏にある悲しさが詰まっていた。

 

 東江氏はこの作品が最後の翻訳。ドン・ウィンズロウの作品を多く翻訳しており、「犬の力」も「フランキーマシーンの冬」も彼の翻訳。壮大でありながら恐ろしく冷徹な文体で、ハードボイルドな世界に浸らせてもらえた。まだ若くしてお亡くなりになたのは、残念。

 

 翻訳家としての最後の作品として「ストーナー」を選んだのは、主人公の生き様に感じるところがあったからだろう。派手ではない人生だが、それでも強い気持ちを胸に秘めて毎日を生きる、しかし人生は思う様には進まない。挫折と共に歳を経るのが人生だ。生きることは、なかなか骨の折れることだ。

 

 訳者あとがきにあった、この言葉が胸に残った。

人は誰しも、思うにまかせぬ人生を懸命に生きている