モテたい理由

モテたい理由 (講談社現代新書)

　面白いエッセイ（タイトルが惜しい）。切り口が斬新で、勉強になった。複数の女性誌を通して女性心理を分析する、という手法がいい。具体的で、分かり易く、説得力があり、そしてかなり笑える。「女性の時代」という言葉の正体は、必ずしも女性が自分の人生を自由に方向付けられるようになった、ということを指すのではなく、単に女性向け市場が拡大するようにメディアと広告業界が頑張っているだけである、という視点はお見事。けれど、これが一般的に真実だとしたら何だか嫌だな、と感じてしまうような女性心理分析も結構あるので、「えー、そうなのか……うーん」と唸ってしまう場面もしばしば。

　
　本書は、確かに女性の心理についての記述が中心的ではあるけれど、著者の視野は広い(広過ぎるかも)。そして、著者の洞察は実に鋭い。論証部分は省かれているし、文脈からみても唐突なのだが、それでも結論だけ示されて「なるほど」と納得しそうになってしまう。事例を抜き出そうとすると引用ばかりになるので避けるけれど。本書の一貫したテーマである、「社会にとって何が大事で、何を目指そうとしているのかが決まっていない／間違っていることこそが、現代日本の最大の問題である」という問題意識が色んな切り口から伝わってきた。

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