雑記帳

関西在住の中年男性による日々の雑記です。

マンションの耐震強度偽装について

今頃ようやくこの事件のことを知ったのだが、不動産会社のヒューザー社長が何かひどいことをやったのか、と最初は思った。各種メディアでもこの社長をやたらと責め立てているし、本筋とはあまり関係の無いことでもやたらとニュースになるし(「テレビ番組で放送禁止用語連発!」とかね)、またご本人が悪人面であったり興奮しやすい性格のようでやたらと悪者オーラを出しているし。


しかし、色々と記事を漁ってみて思ったのだけれど、責任は不動産会社だけではないでしょう?ヒューザー社長の「私の会社が第一被害者で第二被害者が消費者の皆さん」なんて発言を支持するつもりは全く無いし、商品についての専門的な知識がほとんど無い一般消費者と、それをビジネスにしている業者とを同じレベルに設定するなんて何を寝ぼけたことを、とは思う。それにしても何故ヒューザーの社長ばかりが目立つのかとやはり不思議に思う。それはきっと、「面白いから」なのだろう。鈴木宗男も、ホリエモンも、ヒューザー社長も皆同じで、出せば数字が取れる人たちなのだろう。こういう風潮、私としてはメディアに馬鹿にされている気がしてとても不愉快なのだ。


メディアの話はさておいて、消費者としてはこれから不動産売買がどう変わるのかということに興味がある。マンションの一部屋を購入する際に、建物全体の設計なんて分かるはず無い。専門知識が無いのだから、信頼するのは不動産販売会社しかありえない(だから確認会社に手数料を払って観てもらうのは不動産会社の責務)。この確認にかかる項目が(行政か民間かは別として)より経費がかかるシステムになるのだろうか?今の事件で「不安」を煽られた消費者は「安全」と求め、販売者は「安全」への対価を今まで以上に求めるのだろうか。ってことは「業界努力」は無しですか?


しかし、上記の話の前提である「消費者は専門的知識が無い」ということはどういうことなのだろう。知識が無いのに、数千万円も投資をするものだろうか。ここでも「リスクを承知で購入(投資)しているのだから、そのような顧客に税金で補填する必要は無い」という自己責任論が出てきているようだ。確かに税金投入は出来ない相談なのだろうけれど、それは消費者保護が不要という話にはならないでしょうよ。そもそも購入者は建築に関する専門的知識も不動産投資にかかるリスクも考えずに数千万円分のローンを組んでいるのではないかと私は思うのだ(そして、それほどの金額が必要な買い物も初体験だろう)。もう完全無防備。でも、だからこそ需要が支えられてきた一面は否定できないのではないかな。


もしも今回の事件の結果として、購入者は不動産を失いローンだけが残るという事態になったらどうなるのだろう。私なら、マンション購入意欲が限りなく下がる。少なくとも新規物件の購入はしたくないと思う。数千万円もの買い物にびびりまくって、商品に関するリスクを全部大家にかぶせて、賃貸料を支払い続けるだろう。当たり前だ。「建築に関して勉強しろ」とか、「建築確認は個別に確認業者に委託しろ」とか、「大根も鉛筆もマンションも同じ商品だ」という議論では不動産市場が冷え込むだけだろう。


私はマイホーム信仰が無いので、正直なところ不動産投資に大金を無防備に注ぎ込む気持ちが分からないのだけれど、消費者の需要が無ければ市場は動かないのだから、やはり消費者がお金を出しやすくする環境を整える必要はあるのだ。不正な取引が起きて消費者の信頼を失ったのだから、その需要喚起のために必要なのは消費者の責任を重くすることでは無いはずだろう。いいじゃん、素人で。素人だって住む場所くらい欲しいよ。


なお、今回の事件でとても勉強になったのは次の記事。