雑記帳

関西在住の中年男性による日々の雑記です。

ブルーマンデー

最近、長男は月曜日になると学校に行きたがらない。沈んだ顔をして朝ごはんをモソモソ食べて、着替えをして、忘れ物がないか確認し終わっても表情は暗いまま。そして出発の時間が近づくと身体が動かなくなり、しくしくと泣き出してしまう。

 

「どうしたの?」と聞いても、返事は「行きたくない」とだけ。どうして行きたくないのか尋ねても「忘れ物をしたら怒られるから」など、もうひとつ腹に落ちない回答(それはそれで彼なりの理由なのだろうが)。ここで「いいから早く学校に行きなさい。遅刻するでしょ」と無理やり家を追い出したところで意味がないし、とはいえ、ずっと家の中で泣き続けるのを放っておくのも無策だし・・・。

 

これは不登校の始まりだろうか、もしや学校でいじめられているのか、などと心配もするが、他の曜日はすっと出かけているし、週末はクラスの友達と遊ぶのが何よりも楽しみだし、どうもそれは違いそうだ。となると、これはブルーマンデー症候群なのではないか、とあてをつける(名前がつくだけで安心するタイプ)。もしそうなら、私と同じということか。それなら「解決」はできなくても、「共感」することくらいはできそうだ。

 

長男の嗚咽が治まったところを見計らって、今日はお父さんと一緒に行こうかと声をかけると、鼻をかみながらうなずく。家を出て、一歩踏み出し、手をつないで学校に向かう。「お父さんもね、月曜日は仕事に行きたくないんだよ。」「そうなの?」「そうそう。本当は毎日行きたくないんだけど、特に月曜日はね。」「なんで月曜日は嫌なんやろ。」「理由はいろいろあると思うけど、やっぱり楽しい休みが終わってしまうのが嫌なんじゃないかな。土日は楽しかった?」「うん。」「学校は嫌い?」「別に普通。友達と遊ぶのは好き。先生はちょっとこわい。」「そうか。でも水曜日とか木曜日の朝は出かけるの平気だろう?」「うん。」「金曜日は一番弱いんだよ。」「たしかに金曜日は弱いかも」「で、月曜は最強なんだ。ブルーマンデーって言葉があるくらいでね、最強の月曜日にはだれも勝てないんだよ。」「お父さんも勝てない?」「全然勝てない。お父さんみたいに月曜日に負け続けたベテランは、もう日曜日の夕方から憂鬱になってるからね。」「へー、そうなんだ。」なんて、適当な話をしながらゆっくり進む。

 

小学校が見えてきた。長男の足が止まる。また涙が出てきてしまう。しばらく待って、涙をふいて、帰ったらAmazonプライムでドリフの全員集合を一緒に見ような、と約束して、また一歩踏み出して、校門をくぐる。何か見えない大きな壁を、少しずつ乗り越えようとしているような姿に胸を打たれる。つないだ手が、やたらと熱く感じた。

 

それじゃ、お父さんも行きたくないけれどお仕事に行ってくるよ、と別れようとするとまた足が止まり、涙があふれる。玄関前で泣きじゃくる長男を見て、校長先生が近寄ってきた(いつも校門に立って子どもに朝の挨拶をされている)。大げさに心配するでもなく、軽薄に励ますでもなく、「どうしたの?つらいの?」と傍に寄り添って話を聞く姿勢に感謝する。長男の表情や仕草から行けそうだと直感したので、頭をくしゃっとつかんで、じゃあねと別れ、職場に電話して「すみません、一時間有休とらせてください」と伝えてから駅に向かう。

 

こちらはその後も色々心配するのだが、家に帰って本人から話を聞くと、すぐに教室に入って授業を受けて、休み時間は友達と遊んで、「今日は普通だったかな」なんて言う。まったく(笑)。というわけで、毎週月曜日の朝は大体こんな感じだ。大変と言えば確かに大変なのだが、一方で、親子でそれぞれものすごく大切なレッスンを受けているような気もしている。