雑記帳

関西在住の中年男性による日々の雑記です。

イン・ザ・メガチャーチ

 

 

 朝井リョウ著。「推し活」がテーマの本、くらいのイメージで読み始めたが、その情報は間違いだった。この本は、小説(フィクション)ながら、現代の日本を残酷なほど明確に描いている。 神や宗教にすがれない、確固とした価値観も序列も存在しない、どこを向いて歩いていけばよいか分からない現代日本の危うさを表した作品だ。

 

 人という動物は、「ただ生きる」ということが難しい。他の動物からすれば不思議な話かもしれないが、人間はその人生に何かしらの「物語」を必要とする生き物なのだ。自分自身で「物語」を作って育てていける人はまだ良いが、そうでない大半の人は与えられた「物語」の中で生きていく。

 

 藤子不二雄Aの『笑ゥせぇるすまん』は毎回、「この世は老いも若きも男も女も、心の寂しい人ばかり。そんな皆さんのココロのスキマをお埋め致します。」と言う台詞から始まる。主人公の喪黒 福造は顧客から一銭も取らないセールスマンだったが、現代ビジネスのマーケティングは心の隙間をえぐってなんぼなのだろう。

 

 主要登場人物である久保田慶彦が同年代なため、共感しながら読み進めていったが、あまりにもひどい展開ではないか。途中から、なんとなく破滅的な展開を予想していたが、それにしても救われない物語だ。とは言え、本作が傑作であることは疑いようもない。読後に感じた恐怖と不快さは、それだけ本書が持つ力の表れでもある。