雑記帳

関西在住の中年男性による日々の雑記です。

米ナスダック、上場企業に女性やLGBTQの役員登用を義務化へ

どんなものであれ「現在の姿」にはそれを形成する過程があったはずであり、そういう意味で現状には「理由」があり、「メリット」がある。だから、改革(変革)を無条件に是とするべきではないが、一方で現状は変えられない(変えてはいけない)ものでもない。

 

以上のように考えると、何かを変えようとしたときに軋轢が生じるのはやむを得ないことと分かるが、議論自体は成立するはずだ。できるだけ客観的に(そこが難しいのだが。ついついポジショントークをしてしまうのが人間の性)、現状のメリットとデメリットを比較して、もっと良くなる見込みがあるならばそこに向かって変えていけばよいし、課題はあるにしても現状が他の選択肢よりましだと考えるならこのままでよい、という結論になる。

 

こう整理すると単純なようだが、以上のような議論自体が成り立たない(阻害される)こともある。現状を是として変えることを許さない、という意見もしばしば発生する。例えば、「伝統」とか「風土」とかに立脚する主張に対しては、議論の展開はなかなか難しいだろう。変わらないこと自体に価値があるという主張は、ある意味で無敵だ。・・・そんなことをつらつらと考えていたときに、こんなニュースを見かけた。

 

forbesjapan.com

www.nikkei.com

www3.nhk.or.jp

 

いわゆるクォータ制なのだろうが、ナスダック上場企業の全てを対象とするとはすごい規模だ。記事によると、ダイバーシティ(多様性)の向上が目的とあるが、同時に、多様性の確保は財務パフォーマンスや業績の向上に必要だとされている。つまり、多様性の確保自体が目的なのではなく、企業がその価値を発揮するために多様性の確保が必要だと言っているのだ。

 

もしそうだとすると、この制度はアメリカだけの話ではなく、世界中どこでも有効な制度になり得る。「人権」に主眼を当てた場合、「制度というものは国によって異なるものだ。」などと言われてしまって広がりを欠いてしまうが、ビジネスならばその壁を超えることができる。人間の倫理や良心に訴えるのではなく、金を前面に出して制度に落とし込み、そこから世の中を変えていくという発想は大変効果的だと思う。「利」こそが現代社会の「理」なのだ。

 

果たして今回の義務化が実現された場合、どれほどの影響が生じるのだろうか。アメリカで生じた波は、いつか日本にもやってくるだろう。