雑記帳

関西在住の中年男性による日々の雑記です。

波よ聞いてくれ(1)~(6)

 

波よ聞いてくれ(1) (アフタヌーンKC)

波よ聞いてくれ(1) (アフタヌーンKC)

 

  

沙村 広明著。最高に面白かった。「おひっこし」を読んだときにも感じたが、沙村氏は会話の展開がものすごく上手い。言葉遣いにセンスがある。そして主人公の設定も上手い。努力家とか、人格者とか、そういう「いかにも」主人公像と真逆の、しかしカオスなエネルギー溢れる、本音と生き様が前面に出ている鼓田ミナレがこの物語の主人公。しかも舞台は地方のラジオ局ときた。あらゆる面で私の興味を引く作品で、今まで読んでいなかったのが不思議なほどだ。一気に6巻まで読破してしまい、早く続きが読みたい。

 

もしかしたら、著者は時折、登場人物に自分の考えを代弁させているのかもしれない。ラジオパーソナリティができる「人助け」なんて高が知れている、と話すミナレに対し、南波 瑞穂の台詞、「聞いてくれた人の背中をそっと押す程度、退屈な雰囲気の中でくすっと笑える程度、それで十分じゃないですか。」。このささやかなやり取りに、私は著者の矜持(または仕事論的な何か)を感じた。