司馬 遼太郎著。1巻および2巻は斎藤道三が主役だが、3巻および4巻は織田信長と明智光秀の両名が同じ分量で描かれている。二人の結束と離反が描かれるので、道三のときのような痛快な物語ではない。むしろ、多分に光秀に同情的な描写が多く、信長ファンとしては微妙な感想を持った(別に明智光秀が嫌いなわけではないが)。
徹底的な現実主義者である革命者織田信長、足利幕府最後の将軍である義昭の人徳のなさや陰謀癖、その人物を担ぎ上げてしまった光秀の苦悩、冷静に「波」に乗ることに重きを置いた細川幽斎。戦国主義といわれるものの、いるのは現在と同じ、苦悩する人間である。司馬遼太郎の筆にのって、「早く次を」「早く次を」とページをめくり続けるのはとても楽しい時間だった。