城山 三郎著。金解禁に挑んだ浜口雄幸と井上準之助の生き様を描く。書名が全てを物語っており、「男子の本懐」についての本である。熱い。
金解禁についての経済学的評価は、それほど高くないが、当時に対案があったのかというと疑問である。各国ですでに金解禁が行われていたという国際情勢、弱体な日本経済の根本的な要因、また軍縮のための緊縮財政の必要性などから、金解禁は「いつか」果たすべき政策課題とみられていた。アメリカに端を発する世界恐慌の影響が直撃したために、時期が悪かったという批判はあるかもしれないが、当時の政治家にそこまで見通すことが可能だったのだろうか。
それはさておき、この本はふたりの男子の生き様についての本である。経済政策の評価については、本書があつかうテーマとは異なる。両者とも仕事における不遇の時代を経験しており、大切なのはそこで屈せずに、地道に己のなすべきことに注力し続けたことだ。人生におけるすべての点はいつか線になる、とジョブズも言っていた。冬来たりなば春遠からじ。