- 作者: 谷崎潤一郎
- 出版社/メーカー: 中央公論社
- 発売日: 1996/02/18
- メディア: 文庫
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日本語(によって綴る文章)の美しさについてのエッセイ。源氏物語の言葉遣いの妙を説明されてもそう簡単に実用に活かせないのでは、などと思わないでもないが、著者の訴えたい日本語の、というよりも日本人の持つ美意識や美学については納得する。要点としては、まずは分かり易さを第一に考えなさい、ただし礼節や奥ゆかしさを何時も忘れずに、というところだろうか。「華を去り実に就く」というテーゼは、饒舌を避けて無駄を省き、そして簡潔に分かり易く、ということを一言で上手く表しているな。
特に印象に残っているのは、李白の「静夜思」の解説部分。ここでは詞の引用に留めておくけれど。
牀前看月光
疑是地上霜
挙頭望山月
低頭思故郷
牀前月光を看る
疑ふらくは是れ地上の霜かと
頭を挙げて山月を望み
頭を低たれて故郷を思ふ
さておき、吉行淳之介の解説がとても面白い。こんなぶっきらぼうな巻末解説も珍しいだろう。