雑記帳

関西在住の中年男性による日々の雑記です。

NHK探検ロマン世界遺産「記憶の遺産 アウシュビッツ・ヒロシマからのメッセージ」

 この2つの地域が、何故世界遺産に登録されたのか。両者の世界遺産登録へ尽力したアンジェイ・トマシェフスキ氏(元ICCROM事務局長)は次のように語る。それは、人間性を否定した/されたところを保存することによって過去を(人類の真実を)伝えようとすること、その記憶し続けようとする姿勢こそを世界遺産として保存すべきだからだ、と。


 番組にはアウシュビッツ収容所から脱走に成功した元囚人と、広島で被爆した韓国人が出てくる。彼(彼女)らの哀しみと苦労は、当事者以外にはとても理解できないほど深いものなのだろうけれど、それでも彼(彼女)らは「何か伝わるかもしれない」と信じてくれているからこそ、人間の善意へ向けて語りかけ、警告してくれる。本当なら思い出したくもないことだろうに。


 もうすっかり使い古されてしまった言葉かもしれないが、このふたつの世界遺産を前にするときには、軍事的もしくは政治学的に考えるのではなく、そしてときには国籍を基にして考える態度も保留して、ひとりの人間として、まるで家族のことを考えるように思慮しなければならない。そうしたメッセージが徹頭徹尾貫かれていて、本当に良い番組だった。