- 作者: 中島らも
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 1999/03
- メディア: 文庫
- 購入: 6人 クリック: 34回
- この商品を含むブログ (104件) を見る
様々なドラッグに関するらもさんのエッセイ。方向性は特に無く、というかむしろグダグダなのだが、面白い。そして、その面白さの根底には、著者が持つふたつの信念が見える。ひとつは、俺もお前も、ジャンキーは勝手に死ねば良い、ただし死ぬまでは好きに生きれば良い、自分など守らずに全てを受け入れて変容しろ、・・・という、徹底的な快楽原則。そしてもうひとつの信念(というか価値観かな)は、自分にも他人にも徹底的に冷徹な視点を持つこと。多分、らもさんは誰にも同情しなかったし、自分を可哀想だとも思わない人なのだろう。彼の笑いは、冷たく、乾いているなと思う。そこが好きなのだが、亡くなった今となっては少し物悲しい気もするのだ。
ジャンキーが求めているのは、クスリだけだ。いっそすがすがしい退行なのかもしれない。「食い物」のかわりにドラッグがある。言葉はいらない。獣道に沿って進むだけだ。行く手に悪党薬局が開いているのが見える。